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2023年04月05日 更新

治験ってなに?どのように探したらいい?治験の基礎知識を解説

治験という言葉は耳にしたことがあっても、実際どのように運用されているのかは知らない人がほとんどなのではないでしょうか?

今回の記事では、治験を利用した治療を選択肢として持つために、先ず前提となる治験の基礎知識を紹介していきたいと思います。

治験とは何か?まずはその定義を知っていきましょう。

一般に、人によって行う試験を「臨床試験」と言います。その中でもとりわけ、薬の候補を用いて、国の承認を得るための臨床試験は「治験」と呼びます。
治験の成績が国の審査をパスし、承認されて初めて「薬」となるわけです。

治験は、国によって定められた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」の要件を満たした病院のみで許可されていますが、その要件とは以下のものです。

  • 医療設備が充分に整っていること

  • 責任を持って治験を実施する医師、看護師、薬剤師等がそろっていること

  • 治験の内容を審査する委員会を利用できること

  • 緊急の場合には直ちに必要な治療、処置が行えること

この要件を見ていただいてわかるように、治験が実施される病院は、医師だけでなく、看護師、薬剤師、審査委員会、緊急の場合のバックアップ体制のすべてが備わっていなければなりません。

さらに治験を開始する前に、医師は、患者に対し「説明と同意」を得ることが義務付けられており、この「説明と同意」を「インフォームド・コンセント」と呼びます。

説明の際には、薬に関する「説明文書」が渡され、それに沿って医師から説明を受けますが、説明文書には、下記の内容を必ず記載するよう決められています。

  • 治験の目的、治験薬の使用方法、検査内容、参加する期間

  • 期待される効果と予想される副作用

  • 治験への参加はいつでもやめることができ、不参加の場合でも不利益は受けないこと

  • 副作用が起きて被害を受けた場合、補償を請求できること

  • カルテ、検査結果などの医療記録を治験を依頼した製薬会社、厚生労働省、治験審査委員会の担当者が見ること

  • 担当する医師の氏名、連絡先

  • 治験に関する質問、相談のための問い合わせ先

以上の説明文書を読み、納得がいくまで医師に質問をし、治験薬への理解を深めたうえで、同意書にサインをします。

治験の定義や規則などは、これでわかっていただけたでしょうか?

治験薬は国の承認前の薬であるという点で、不安があるかもしれませんが、バックアップ体制も充実しており、万が一の場合もしっかり対応がとれるように、細かく検査や問診を行っていきます。

また、被験者の意思は最大限尊重され、途中で中断することも可能です。

このように、薬の承認を得ることが「治験」の目的になるわけですが、治験に至る前に、薬の開発は、さまざまな実験を重ねています。

そして治験そのものもフェーズ1・2・3と3段階に分かれており、それぞれ対象となる条件や人数が異なります。

治験のフェーズ1では健康な成人の方が対象となることが多いですが、患者が20〜80人の少数のグループで治験する場合もあります。

続くフェーズ2では治験対象となる患者数が増え、数百人が参加します。

そして治験のフェーズ3では数百人〜数千人の患者を対象に、治験の最終チェックが行われるのです。

一般募集をしている治験の多くがフェーズ3であり、この場合治験を受ける段階で、慎重な議論が幾度となく繰り返されて、初めて治験が実施されることになります。

また、治験の対象となる薬は、日本で開発される新薬に加え、すでに海外で使用されている薬も数多くあります。海外の薬の場合は、海外で実施された治験はクリアしており、日本で承認するために、日本人への効果や副作用を改めて確認する治験となります。

このように、治験はフェーズによって、薬の開発の段階も異なり、また募集される人数も違いがあることがわかっていただけたと思います。

また大人数の募集がかかるフェース3の治験は薬の試験最終段階だということも明確になったでしょう。

治験を選択肢に考えたら、まずは現在どんな治験が行われているかを知るところから始めましょう。
対象となる症状や、実施可能な地域などがありますので、どこでも誰でも治験を受けられるわけではありません。

治験を調べるには、治験の応募サイトを使うと便利です。
サイトに会員登録をしなくても、今行われている治験の紹介を見ることができるので、治験がどんなものか具体的に知りたいときに、とても役に立ちます。

参考にサイトを二つ紹介しましょう。

トップぺージ|トライアドジャパン株式会社|精神科の治験ボランティア募集 (triad-chiken.net)
日本初の臨床試験マッチングサイト - smt (searchmytrial.com)

現在応募している治験に参加したいと考えたら、治験募集サイトに登録し、実際の治験応募へと進みます。

治験に応募してからの流れは次の6ステップです。

ステップ①②はこの記事の最初に説明した「インフォームド・コンセント」の部分を刺します。
担当医師による、治験薬の説明を行い、患者の同意を得る作業です。

続くステップ③では事前検査と参加条件の確認が行われます。
参加条件には年齢、性別、病歴、治療歴、今の病状などさまざまな項目がありますが、治験の募集の説明ですでに知っている内容です。
改めてこの参加条件を満たしていることの確認が取れると、事前の診察と検査をします。

このようなステップを踏んでようやく、ステップ④で治験薬の使用が開始されます。

治験薬の服用と並行して、ステップ⑤では、病状の変化や副作用などを、診察と検査を通して調べていきます。

治験期間が終わってもステップ⑥にあるように、健康被害があった場合は適切な処置を補償として受けることができるので、異変を感じたらすぐに問い合わせてみましょう。

以上の様に、サイトで治験の登録が済めば、続くステップにはバックアップをしてくれる専門家がついてくれるので、疑問が生じたら、いつでも聞くことができます。

また、あらゆる段階において、強制されることはないので、安心して治験の段階を進めていくことができるはずです。

治験は新しい薬を国に承認してもらうために、非常に重要な役割があり、治験に進む前段階に、多くの研究と実験が重ねられているということがわかっていただけたでしょう。

また実際に治験が始まってからも、説明や検査など数段階の準備を経て、服薬が始まる制度であるため、いきなり、未知の薬を口にするということはないということもわかります。

治験の知識を通して、治験に対する不安も減ったのではないでしょうか。

<監修>

大澤 亮太
精神保健指定医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
横浜市の精神科病院・クリニックを経て、首都圏にこころみクリニック5院東京横浜TMSクリニック2院を運営。

<執筆>

中道ひなた
自身の20年にわたるうつ病闘病の経験を生かして、執筆活動をする。
noteにおいて、うつとの向き合い方などを公開中。中道ひなた|note

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