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2022年03月06日 更新

家族はどう接したらいい?うつ病を抱えたご本人との関わり方

本記事は、うつ病患者の家族向けコミュニティサイト「エンカレッジ」と、精神障がいを抱えた親とその子どもを応援するNPO法人ぷるすあるはのコラボ記事です。

親・子ども・きょうだい・祖父母など、自分の家族がうつ病と診断されたら。そのとき、周囲はどのようにご本人とかかわり、どんな言葉をかければいいのでしょうか。

今回は、病気を抱えたご本人への接し方について、臨床心理士がお話しします。

はじめに

うつ病を抱えた方をサポートしているご家族からのご相談で、とても多いものがご本人とのかかわり方です。

  • 病気になってから急に怒りやすくなって、どう接したらいいかわからない

  • 落ち込んでいるとき、どんな言葉をかけてあげたらいいの?

など、病気を抱えたご本人との接し方がわからずに悩む方は少なくありません。ご家族だからこそ距離が近く、よくも悪くもお互いに影響を受けることが多いでしょう。

かかわり方を知ることは、ご本人の病状を安定させるためにも大切です。かかわり方・接し方でお悩みの方に、本記事が少しでもお役に立てればと思います。

ご本人と接する前にできること

ご本人と直接かかわる前に、周囲の方ができることについてお伝えします。

病気に対する知識を身につける

病気の知識を増やすことは、ご本人とのかかわりに役立つだけではなく、ご家族の不安を和らげることにも繋がります。

無理のない範囲で病気について調べて、正しい知識を身につけておくことをおすすめします。インターネットで調べる・書籍を読む・専門家に質問するなど、ご自身がやりやすい方法を探してみましょう。正しい知識を身につければ、ご家族の不調に対して「これは病気の症状なんだ」とスムーズに理解できるかもしれません。

うつ病の症状には個人差がありますが、例えば以下のようなものがあります。

  • 睡眠のリズムが乱れて、不眠だけでなく過眠(かみん)になる場合がある

  • 物事のとらえ方が被害的になるため、怒りやすくなる・落ち込みやすくなるなど、気分の波がみられる

世の中に広まっている情報の中には、残念ながら正しくないものも多々あります。情報の見極めに不安を感じる方は、主治医や臨床心理士など、専門家に相談するのが安心でしょう。

ご本人と接するときのポイント

ここからは、ご本人と接するときに意識していただきたいポイントをお伝えします。

受け止める姿勢を持つ

ご家族からすると、病気を抱えているご本人の発言や態度に「理不尽だ」「内容にまとまりがない」と感じることもあるでしょう。相手の言葉を受けて「それは違う」「結論から言ってほしい」と言いたくなるかもしれません。

お気持ちはとてもよくわかりますが、ご本人からしても、病気によって発言や態度をコントロールできてない可能性があります。可能な範囲で、まずはご本人の発言を受け止めることを意識してみてください。

ご本人との接し方として、以下を例にあげます。

  • 言葉の頭に「でも」「だって」「だから」をつけないようにする

  • 「つらかったんだね」「楽しかったんだね」など、相手の気持ちに寄り添う

相手の話に共感することで、感情的な対立をさけて、いい距離感が保てるようになります。

「励まし」には工夫を

ご本人の様子を近くで見ているご家族が「早く元気になってもらいたい」と願うのは自然なことです。その気持ちから、一生懸命に相手を励ますこともあるでしょう。

励ます行為自体は、決して悪いことではありません。ただ、励まし方によっては、ご本人にプレッシャーを与えてしまう可能性もあります。より気持ちが届きやすくなるように、励まし方は工夫するようにしましょう。

以下のように言葉を言い換えるだけでも、相手に与える印象は変わります。

  • 「頑張ってね」→「一緒に乗り越えていこうね」

  • 「早く元気になってね」→「あなたのペースでゆっくりやろうね」

ポイントとしては、ご本人の目線に合わせることです。焦らず、慌てずに、ご本人に合わせた発言を意識してみましょう。

「特別扱い」には注意

「早く元気になってほしい」という気持ちから、ご家族がさまざまな気分転換を提案することもあるでしょう。ご本人の状態によっては、その提案がいい方向に働く場合もあります。

ただ、病気の初期や悪化しているときなどは、気分転換が逆効果になる可能性もあるのです。

  • 症状の悪化によりエネルギーが低下して、普段楽しめることが楽しめなくなる。必要以上に疲労感を感じてしまう。

  • 「周りに気をつかわれている」「せっかく誘ってくれたのに楽しめない」などの気持ちから、罪悪感を強めてしまう

気持ちの落ち込みが激しいときは、ご本人のペースに合わせた接し方が必要です。参考として、接し方で注意したい点を以下にあげます。

  • 旅行の計画は慎重に。励ますための旅行でも、ご本人の状態を優先させる

  • ご本人の負担になる可能性があるので、自宅にひきこもりがちでも無理に友人や親戚を招かない

さいごに

ここまで、ご本人との接し方について、いくつかのポイントをお伝えいたしました。

ただ、ご家族の形がそれぞれ違っている以上、どのご家庭にも当てはまる正しいかかわり方はないと考えています。日々変化するご本人の症状によっては、状態に合わせて接し方を変える必要も出てくるでしょう。

今回のコラムはあくまで参考程度にしていただき、ご家族ごとのより具体的なかかわり方について知りたい場合は、主治医やカウンセラーなどの専門家に相談するのをおすすめします。

また、ご本人とのかかわりを、ご家族だけで抱え込まないことも大切です。病状を安定させていくためには、ご家族の協力は必要です。ですが「家族だから支えなければ」と意気込みすぎると、ご家族側が疲弊して、ご本人との関係が悪循環になってしまうケースもあります。

ご家族だけで抱え込まないために、相談できる機関や専門家をぜひ探してみましょう。

  • 通院している病院やクリニック

  • カウンセリング

  • 精神保健福祉センター

  • 家族会        など

頼れるところには遠慮なく頼りながら、ご本人の病気と向き合っていきましょう。

担当

エンカレッジ

執筆者

兵働 弘一(ひょうどう ひろかず)/臨床心理士、公認心理師
スクールカウンセラーとして小・中学校でのカウンセリングに携わる。現在は就労移行支援事業所EXP立川でメンタル不調を抱えて就職を目指す方の就活の支援を行う。

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