病気やケガなどが原因で、今まで通りの生活を送るのが困難になったとき、生活費や医療費を工面するのも簡単なことではありません。
そんなとき、活用できる制度が「障害年金」です。
「障害年金ってなに?」
「うちの家族も支給の対象なの?」
「受給の条件はある?」
疑問も多い障害年金について、わかりやすく図解付きで解説します。
障害や病気によって生活に支障が出た場合に、受け取ることができる年金です。
障害年金には、以下の2つがあります。
「初診日」に加入していた年金制度によって、どちらが支給されるか変わります。
■ 初診日ってなに?
障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師の診療を受けた日
初診日に国民年金の加入者であれば「障害基礎年金」が支給され、厚生年金の加入者であれば障害基礎年金にプラスして「障害厚生年金」が支給されます。
★ 障害の等級が3級の場合は、障害厚生年金のみ支給されます。
対象者は非常に多岐にわたっています。
病気やケガなどにより、障害が残っていて日常生活や仕事に支障がある方は、障害年金を受給できる可能性があります。
身体だけではなく、精神疾患・精神障害、または発達障害の場合も対象になります。
障害年金を受けるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
「初診日」とは、前述の通り障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師の診療を受けた日のことです。
障害年金の申請には、初診日を証明できる書類を付ける必要があります。
■ 初診日を証明できる書類ってなに?
優先度の高いものとしては、「受診状況等証明書」があげられます。初診を受けた病院で作成できるか、一度相談してみましょう。
障害年金に必要な書類一式は、年金事務所でもらうことができます。
初診日に年金制度に加入していることも、障害年金を受給する条件です。
以下2つの納付要件のうち、どちらかに当てはまっている必要があります。
★ 過去に年金の未納があると、障害年金を受給できない可能性があります。
1) 初診日のある月の前々月までの、公的年金の加入期間の2/3以上の保険料が、納付または免除されている
2) 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に、保険料の未納がない
「障害認定日」とは、初診日から1年6ヵ月経過した日、またはその期間内に治った日(症状が固定された日)をいいます。
障害年金を受給するには、「障害認定日」の状態が、国が定めた「障害認定基準」に該当している必要があります。
■ 障害認定基準ってなに?
障害年金の対象になるかを示した基準を、「障害認定基準」と呼んでいます。
ご自身やご家族の障害や病気が障害年金の基準に達しているかどうかは、日本年金機構のホームページをご覧になることをおすすめします。
★ 1年6ヶ月の時点で症状が安定していたとしても、65歳に達するまでの間に症状が悪化した場合は、そのとき請求できます。
★ 一定の障害の場合は、1年6カ月を待たずに障害認定日を迎えることがあります。
★ 日本国内に住んでいた60歳以上65歳未満の間に障害が生じ、その状態が続いている場合は、65歳までに請求すれば受給できる可能性があります。
★ 初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには、障害手当金(一時金)が支給されます。
「障害基礎年金」か「障害厚生年金」によって、支給額は変わります。
また、障害の程度を示す「等級」によっても、支給額は変動します。
(この場合の等級は、障害者手帳の等級とは関係ありません)
障害基礎年金は定額で、等級によって支給額が決まっています。
1級 | 2級 |
975,125円(月額 81,260円) | 780,100円(月額 65,008円) |
障害年金を受給する方に、18歳到達年度の末日までにある子(障害者は20歳未満)がいる場合は、子の人数によって加算が行われます。
1人~2人目 | 3人目から |
1人につき224,500円(月額 18,708円) | 1人につき74,800円(月額 6,233円) |
■ 18歳到達年度の末日ってなに?
いわゆる、学校の学年度と同じです。4月1日~翌年の3月31日までを一括りにして考え、3月31日が末日となります。
障害厚生年金は、以下のように計算をします。
1級 | ( 報酬比例の年金額 × 1.25 )+ 配偶者の加給年金額 224,500円 |
2級 | 報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額 224,500円 |
3級 | 報酬比例の年金額(最低保障額)585,100円 |
障害厚生年金は、計算が少し複雑です。
等級によって金額差があるということだけ、知っておくといいでしょう。
申請には、以下の2つのパターンがあります。
障害認定日に、障害等級が1級、または2級(厚生年金加入時であれば3級も含む)の状態にあるときに、「障害認定日」を過ぎたタイミングで申請をして受給する。
障害認定日に1級または2級(厚生年金加入時であれば3級も含む)の状態に該当しなかったとしても、その後症状が悪化し、等級に該当する障害の状態になったときに請求する。
★ 請求書は、65歳の誕生日の前々日までに提出しなければなりません。
★ 申請には書類が必要です。詳しくは、日本年金機構のホームページをご覧になることをおすすめします。
「障害基礎年金」か「障害厚生年金」によって、書類の提出先が変わります。
障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
・年金事務所 ・お住まいの市区町村窓口 |
・年金事務所 |
ご本人が窓口に行くことができない場合は、ご家族などの代理人が委託申請することも可能です。
障害年金を受けられるかどうかの基準は、一部を除いて障害者手帳の認定基準とは異なります。障害者手帳と障害年金は、まったく別の制度だからです。
そのため、障害者手帳が交付されていなくても、また障害者手帳の認定対象でない傷病であっても、障害年金を受けられることがあります。
実際には、障害基礎年金・障害厚生年金受給者の27.6%が就労をしています(「年金制度基礎調査」平成26厚生労働省)。
障害年金は、本人が支払った年金をもとに支給されるもの(20歳前に初診日がある障害基礎年金は除く)です。
そのため、現在の経済状況で制限されたり、働いて収入があると受給できないなどということはありません。
初診日に20歳未満で、国民年金に加入していなかったとしても、20歳以降も障害が続いていれば、受給できる可能性があります。
ご家族のみでも、年金事務所への相談は可能です。ご本人の委任状がある場合と、ない場合で、窓口に持参する書類が変わります。
ご本人の委任状が「ある」場合 | ご本人の委任状が「ない」場合 |
・ご本人の委任状 ・代理人の本人確認ができる書類(運転免許証や個人番号カードなど) |
・ご本人の身体障害者手帳、要介護認定の通知書、精神障害者保健福祉手帳または療育手帳など ・施設、療養機関に入所されているときは、施設長の証明(写し可) ・代理人の本人確認ができる書類(運転免許証や個人番号カードなど) |
★ ご本人の委任状の様式は、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
障害年金の手続きは、初診日の確認など煩雑になることが多いです。まずは、最寄りの年金事務所に相談することをおすすめします。
社会保険労務士に、手続きの代行をお願いしてもいいでしょう。すべての社会保険労務士が行っているものではないので、インターネットなどで障害年金を扱っている方を事前に検索するほうが安心です。初回相談は、無料で対応してくれるところもあります。
医療機関によっては、精神保健福祉士や社会福祉士などのスタッフが、手続きを手伝ってくれる場合もあります。
申請の手続きが煩雑で躊躇する場合は、ぜひ専門家の力もかりましょう。
<執筆者>
脊尾 大雅(秋葉原社会保険労務士事務所 社会保険労務士、精神保健福祉士)
メンタルヘルス対策、ストレスチェック、アサーションと労務管理の専門家。労使双方の成長につながる研修の実施を通じて、より良い職場環境づくりを行なっている。