「家族会」ってなに?どうやって参加すればいい?活動内容や探し方も解説

身内が病気を抱えている方たちが集まり、ご自身の気持ちを共有する「家族会」精神疾患知的障害認知症アルコール依存症など、それぞれの病気によって家族会も区分されています。

ひとりで気持ちを抱え込まないために、家族会は活用していただきたいセルフケアのひとつ。ですが、中には「活動内容を知らないから不安」「家族会の探し方がわからない」と、参加になかなか踏み出せない方もいらっしゃいます。

今回は、大阪大学高等共創研究院で教授を務める傍ら、家族会の活動サポートも積極的に行っている蔭山正子(かげやま まさこ)先生に、家族会について詳しく伺いました。精神疾患の家族会に絞って、活動内容や探し方、よくある疑問点などを解説します。

身内が精神疾患を抱えている方たちが集まり、ご自身の体験や気持ちを共有する会です。

家族会にはいくつかの種類があり、病院を基盤とする「病院家族会」や、地域を基盤とする「地域家族会」、近年では有志が結成した会もあり、スタイルは多様化しています。家族会の発足当時は統合失調症の方のご家族が中心でしたが、うつ病双極性障害発達障害の方のご家族が参加することも増えてきました。

団体によって家族会の参加人数は変わりますが、1回の開催で10人~20人ほど参加することが多いです。大きな規模の家族会だと、30人ほどになる場合もあります。

「配偶者の会」「親の会」「きょうだいの会」「子どもの会」と、立場によって家族会をわけているところもあります。ただ、これは参加する方の人数が少ないと区分できないので、立場は関係なく「家族会」として活動している団体がほとんどですね。

団体によっても異なりますが、基本的には「家族会の3本柱」と呼ばれる以下の3つが活動の中心となっています。

1. 相互支援(助け合い)
2. 学習(学び合い、知見を広める)
3. 社会的運動(外に向かっての働きかけ)
1.相互支援(助け合い)

相互支援では、同じ体験をした方同士で困りごとを話し合ったり、気持ちを共有し合います。家族会に参加する方は、「身近に悩みを話せる人がいない」「どう対応したらいいかわからない」など、切羽詰まった状況にいることが多いです。そんな中で、自分の気持ちを理解してもらえる場があることは、生活を続けていくうえで大きな支えになります。

また、ご自身が抱えている困りごとに対して、他の方が取り入れている工夫を聞く機会もあります。

・病院に行ってほしいが、本人が受診を拒んでいる
・周りに相談できる人がいない
・治療をサポートする中で、自分も疲れてしまった
・信頼できる主治医が見つからない

生活や治療をサポートする中で、ご家族は本当にたくさんの困りごとを抱えています。そんな困りごとに対して、自分以外の家庭が実践しているアイデアを聞くことは、ご自身の困りごとを解決するヒントにもなります。

ご自身が取り入れている日々の工夫がある場合は、他の参加者にお話をしていただくこともあります。周りの方の参考になる以上に、お話をするご本人の思考がより整理されるメリットがあります。

2.学習(学び合い、知見を広める)

ご家族にとって必要な情報を、研修会や講演会、家族教室などを通して学びます。専門家を招いて説明を行うこともあれば、ご家族としての体験をお話していただく場合もあります。

病気や治療について、福祉制度について、ご自身のセルフケアの方法など、ご家族が知ることで生活の支えになる内容を扱っています。

3.社会的運動(外に向かっての働きかけ)

社会的運動に関しては、家族会の運営側が行っている活動であり、家族会に参加した方が必ず参加するものではありません。家族会を広めるための広報や啓発を行う他、ご家族の立場で得た知恵を活かして、家族相談を行うところも増えてきました。

家族会は身内が精神疾患を患っている「ご家族の方」が参加する会で、当事者会は「精神疾患を患うご本人」が参加する会です。

会の種類によっては、家族と当事者が両方参加するスタイルを取っているところもありますが、基本的には参加する方の立場によって「家族会」「当事者会」とわけています。同じ立場だからこそ、日常的には言えない気持ちをオープンにできるからです。

ただ、中には病気の症状が重く、「家にひとりにしておくのは心配」「ひとりで待っていることに本人が不安を感じる」と、病気を抱えたご本人と一緒に家族会に参加したいと希望する方もいます。

その場合は、家族会によっては同じ会場の別室で待つことができたり、一緒の参加が認められる場合があります。当日の状況によっても対応は異なるので、ご本人と一緒に参加したい場合は、事前にメールや電話で確認するといいでしょう。

無料で実施しているところもありますが、ほとんどの家族会は年会費がかかります。団体によって金額は変わりますが、年間で3,000円程度に設定しているところが多いですね。家族会はその年会費によって、組織を運営したり、会報誌を作成することができます。

家族会の方針によりますが、本名を名乗らなくていい会も増えてきました。その場で呼ばれたいニックネームをご自身でつける、もしくは偽名を使うなど、家族会によって方法は異なります。

また、家族会で得た情報を外部で漏らさないように、基本的には開催前に説明があります。安心して話せる場所であるように、運営側も個人情報の保護は重視していると思いますよ。

近年では、インターネットで検索する方法が主流になりました。「お住まいの都道府県 家族会」(例:「東京都 家族会」)で検索していただくといいでしょう。

精神障がい者家族の全国組織である、公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)では、各都道府県にある家族会の関連団体をサイトにまとめています。ぜひ参考にしてください。

公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)
精神障がい者の家族の全国組織。2021年現在で全国に約1200の家族会があり、約3万人の家族会員が、さまざまな地域で活動を行っています。関係団体一覧はこちらです。

地域によって異なりますが、保健所などのウェブサイトに、家族会についての情報が掲載されている場合もあります。もしご自身で調べることが難しければ、お住まいの地域にある保健所に電話して、「近くで活動している家族会はありますか?どんな雰囲気の家族会かわかりますか?」と確認してみるのもひとつの方法です。

ご本人に伝えるかは、ご家庭ごとに決めていただくのが一番だと思います。「伝えたほうがいい」「伝えないほうがいい」と決められるものではありません。

ご本人からすると、「自分のことを家族会の人たちに話されるのは嫌だ」と感じる場合もあるでしょう。そういったお気持ちを察して、「買い物に行ってくるね」などと伝えて、家族会に参加する方もいらっしゃいます。

ご本人に伝える場合は、言葉の選び方を意識するだけでも、相手の受け取り方は変わるはずです。例えば「たまには気持ちを吐き出したい」「ストレス発散したい」などの伝え方だと、「自分のせいでストレスが溜まっているんだ」と傷ついたり、言い合いに発展してしまう可能性もあるでしょう。

可能であれば、「病気のことを理解したいから、家族会で勉強したい」などと、相手に対しての思いやりを伝えるのがおすすめです。家族会では、病気の症状を学ぶ場や、治療をサポートするために他のご家族が取り入れている工夫を聞く機会があります。あなたのことを理解したいから参加するんだよ、という気持ちを伝えることは、お互いが気持ちよく過ごすためにもいい方法だと思います。

基本的には対面で実施する家族会ですが、コロナ禍の影響もあり、オンラインで家族会を実施するところも増えてきました。参加できる家族会が近くにない場合は、オンラインでの参加を検討するのもいいでしょう。

オンライン家族会に参加する方の中には、病気を抱えたご本人と一緒に暮らしている方も珍しくありません。「自宅では話を聞かれてしまうから本音を言えない」「相手を傷つけることを言ってしまうかもしれない」と、近所の公園からスマートフォンで参加したり、ご自身で貸会議室を借りた方もいらっしゃいました。

団体によっても異なりますが、オンライン家族会であっても、対面と同じくご自身の顔を出す方法を取っているところがほとんどです。参加する方の顔を表示しないと、誰が聞いているかわからない不安が生まれてしまうためです。もし顔を出したくない事情がある方は、事前に運営側に確認することをおすすめします。

小さなお子さまを連れて、ご自身で抱っこしながら参加する方もいらっしゃいます。家族会の多くは、お子さまをみんなで見ることは難しいですが、ご自身で見ていただくなら問題ない……としているところが多いと思います。

お子さまを見るボランティアがいる家族会は、2021年現在ではまだまだ少ないです。また、家族会を実施する場所によっては、おむつを替えるところがなかったり、ベビーカーの移動が難しい可能性もあります。お子さまを連れて参加したい場合は、運営側に「小さな子どもがいるのですが、参加できますか?」と事前に確認するのをおすすめします。

小さなお子さまを連れての移動が難しい場合は、オンライン家族会も選択肢のひとつです。お子さまが賑やかになったときは音声をミュートにして、ご自身がお話するときだけ音声をオンにして参加する、と工夫していた方もいらっしゃいました。

家族会では、会の中で得た情報を外部に漏らさないようにお願いしています。そのため、インターネット上では、家族会に参加した方の感想がなかなか見えにくいのが現状です。

SNSなどでご自身の感想を投稿するのも、他の方の個人情報が関わることは避けていただきたいです。ただ、「家族会に参加することでご自身にどんな変化があったか」「参加して気づいた、ご自身が日常的に取り入れていた工夫」などは、投稿しても問題ないでしょう。

今までは、匿名性を重視するからこそ、インターネットを絡めて家族会を広める機会は多くありませんでした。ただ、オンライン家族会などが出てきたこともあり、今後はインターネット上で家族会の感想が見られることも増えていくかもしれません。

それぞれの家族会によって、参加するメンバーや雰囲気は違います。そのため、ご自身に合うかは、正直参加してみないとわからないと思います。

ただ、私は「家族会に参加して、初めて今までの思いを語れた」「自分の話に共感してもらって、涙が止まらなかった」と話す方たちをたくさん見てきました。一歩踏み出す勇気は必要ですが、ぜひひとりで抱え込まずに、仲間と繋がってほしいです。

< プロフィール >
蔭山正子(かげやま まさこ)
大阪大学高等共創研究院/教授/保健師
大阪大学医療技術短期大学部看護学科、大阪府立公衆衛生専門学校を卒業。病院看護師を経験した後、東京大学医学部健康科学・看護学科3年次編入学。同大学大学院地域看護学分野で修士課程と博士課程を修了。保健所精神保健担当(児童相談所兼務あり)・保健センターでの保健師としての勤務、東京大学大学院地域看護学分野助教などを経て現職。主な研究テーマは、精神障がい者の家族支援・育児支援、保健師の支援技術。

今回取材を受けていただいた蔭山正子先生が執筆した、『心病む夫と生きていく方法』。精神疾患を抱える夫のそばで、妻が感じた気持ちの葛藤や不安、実体験をもとに生み出した日々の工夫などが、体験談や座談会形式で詳しくまとめられています。

心病む夫と生きていく方法
著者-蔭山正子

■公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)
精神に障がいのある方の家族が結成した全国組織です。現在全国に約1200の家族会があり、約3万人の家族会員が、さまざまな地域で交流し活動しています。
https://seishinhoken.jp/

■こどもぴあ
精神疾患のある親に育てられた子どもの立場の方と、支援者で運営している団体です。子どもだからこそ感じる気持ちを会員同士で共有し、「家族による家族学習会」(子ども版)では学びの場も作っています。
https://kodomoftf.amebaownd.com/

<取材・執筆>

くまのなな(@kmn_nana)