医療費を軽減できる「自立支援医療(精神通院医療)」って?自己負担額や申請方法を解説!

「自立支援医療(精神通院医療)」は、精神疾患の治療にかかる自己負担額を、軽減できる制度です。

金銭的な負担を軽くすることは、焦らず落ち着いて治療ができる環境づくりにも繋がります。
精神疾患のご本人、そしてご家族の安心のためにも、ぜひ制度について理解を深めていきましょう。

制度の対象範囲申請方法、制度の使い方について解説します。

「自立支援医療」とは、心身の障害に対する医療費の自己負担を軽減できる制度です。

自立支援医療には、以下の3種類があります。

1. 精神通院医療(精神疾患の治療)
2. 更生医療(身体障害の治療など)
3. 育成医療

精神疾患の医療費の自己負担を軽減できる制度が、「精神通院医療」です。
ここでは、精神通院医療について説明していきます。

精神疾患の治療のために、医療機関に通院されている方が対象です。

通院で発生する医療費(診療や薬代)のほか、往診・デイケア・訪問看護なども対象になります。

入院費用や、保険適用外の治療病院や診療所以外でのカウンセリング費用などは、対象外です。

公的医療保険による医療費の自己負担額は、小学生以上~70歳未満の方は通常3割です。

これに自立支援医療が適用されると、自己負担額は1割まで軽減されます。

また、この1割の負担が過大なものとならないように、世帯所得などに応じて1ヵ月あたりの自己負担額に上限が設けられています。

さらに、統合失調症などで、医療費が高額な治療を長期間にわたり続けなければならない方「重度かつ継続」が適用され、1ヵ月当たりの負担限度額が低くなります。

所得区分 負担上限(月額) 「重度かつ継続」の
負担上限(月額)
生活保護 - 0円 0円
所得区分1 市町村民税非課税、かつ本人年収が80万円以下 2,500円 2,500円
所得区分2 市町村民税非課税、かつ本人年収が80万円超 5,000円 5,000円
中間所得1 市町村民税33,000円未満 「高額療養費制度」
の限度額が上限
5,000円
中間所得2 市町村民税33,000円以上235,000円未満 10,000円
一定所得以上 市町村民税非課税235,000円以上 対象外 20,000円

重度かつ継続ってなに?

統合失調症など、高額な治療を長期間続ける必要がある方が適応される区分です。区分が適用されると、別枠で自己負担額の上限が設定されます。
(「重度かつ継続」の詳しい範囲は、厚生労働省の「自立支援医療(精神通院医療)について」に記載されています)

ご自身やご家族の状態が「重度かつ継続」に該当するかわからなければ、医療機関の窓口で相談してみることをおすすめします。
※制度の細かい部分までは、医療機関で確認できないこともあります。制度関連の質問は、市区町村の障害福祉課に相談してみましょう。

市区町村の障害福祉課などが、申請窓口です。

市区町村によって、担当する課の名称は異なります。
「障害福祉課」や「保健福祉課」が担当する場合が多いようです。

自立支援医療は、都道府県が定めた「指定医療機関」に通院している場合に適用されます。

現在通院している病院や薬局が「指定医療機関」になっているかどうかは、市区町村の申請窓口に問い合わせることで確認できます。申請を進める前に、一度確認してみましょう。

自立支援医療の申請には、以下の書類が必要です。

1. 自立支援医療(精神通院)支給認定申請

市区町村の窓口に用意しているため、その場で記入ができます。
捺印が必要となるため、シャチハタ以外の印鑑を持っていきましょう。
(申請書は、医療機関などに置かれている場合もあります)

2. 医師の診断書

通院している病院・診療所で、あらかじめ用意してもらう必要があります。
「重度かつ継続」に該当する場合は、診断書の様式が異なることがあります。

申請前に、主治医や医療機関の窓口で「自立支援医療の申請を行いたいのですが、診断書の作成をお願いできますか」と相談してみましょう。

3. 世帯の所得の状況等が確認できる資料

課税証明書非課税証明書生活保護受給証明書など、所得状況を証明する書類です。自立支援医療の申請窓口とは別ですが、市区町村の窓口で手に入ります。

4. 健康保険証

写しでもいい場合もありますが、原本を持っていくと確実です。

5. マイナンバーが確認できるもの

申請書にマイナンバーの記載が必要となります。
マイナンバーカードマイナンバー通知書カードなど、マイナンバーが確認できるものを用意しましょう。

6. 本人確認書類

以下のものであれば、1つで本人確認ができます。
・個人番号カード
・運転免許証
・パスポート
・身体障害者手帳
・精神障害者保健福祉手帳 など

自治体によって、必要書類が異なることがあります。
市区町村の申請窓口や、お住まいの地域の精神保健福祉センターに問い合わせいただくといいでしょう。

自立支援医療は、ご家族など、代理人による申請が可能です。
代理人が申請する場合は、上記必要書類に加えて、以下のものが必要です。

1. 委任状

依頼者(本人)が自筆で記入、押印したものが必要です。

委任状のフォーマットは、申請する窓口でもらえる他、お住まいの市区町村のホームページでダウンロードできる場合があります。
「自立支援医療 委任状 〇〇〇(お住まいの市区町村)」で検索してみましょう。

2. 代理人の身元確認ができるもの

代理人のマイナンバーカード、運転免許証などです。
こちらも、自治体によって必要書類が異なることがあります。事前に担当窓口に問い合わせしてみましょう。
申請前に、主治医や医療機関の窓口で「自立支援医療の申請を行いたいのですが、診断書の作成をお願いできますか」と相談してみましょう。

自立支援医療(精神通院医療)の適用を受けるには、以下の2つが必要です。

1. 受給者証
2. 自己負担上限額管理票

どちらも、自立支援医療(精神通院医療)の申請後に交付されます。

制度の適用を受けるには、受診の度に「受給者証」と「自己負担上限額管理票」を医療機関に提示してください。

「受給者証」は、発行されるまで時間がかかることがあります。

発行を待っている間は、①自立支援医療の申請書の控え②自己負担上限額管理票を医療機関に提示すれば、制度が適用される場合があります。

すべての医療機関で対応してくれるわけではありません。
通っている医療機関・薬局に、事前に問い合わせをしたほうが安心です。

「受給者証」には、1年間の有効期限があります。

引き続き自立支援医療(精神科通院)を利用したい場合は、更新の手続きが必要です。

更新の手続きは、有効期間満了日の3か月前から行うことができます。申請から結果を受け取るまでに時間がかかる場合があるので、申請手続は早めに済ませておくと安心です。

更新の申請は、初回と同じく市区町村の障害福祉課などで行います。
必要な書類は、以下の通りです。

1. 自立支援医療(精神通院)支給認定申請書

市区町村の窓口に用意しているため、その場で記入ができます。

2. 医師の診断書

治療内容や方針に大きな変更がなければ、自立支援医療の診断書は原則2年に1回の提出でいいとされています。
初めての更新では必要ないことが多いですが、不安であれば主治医や窓口に相談してみましょう。

3. 健康保険証

4. 印鑑(シャチハタ不可)

5. マイナンバーがわかるもの

6. 本人確認書類

受給者証の有効期限までに更新ができなかった場合は、「再開申請」の手続きが必要です。再開申請の際は、医師の診断書が必ず必要です。

自立支援医療の期限が切れている状態で通院した場合は、自己負担額は3割になるので注意しましょう。

再開申請の場合は、初回の申請とは異なり、受給者証が届くまでの医療費の払い戻しができません。自己負担額を増やさないよう、有効期限は意識しておきましょう。

自立支援医療の申請をする以前の医療費は、払い戻しができません。

受給者証の発行後に手続きをすれば、申請後の医療費は払い戻しされます。
長期的な通院を続けている方は、ぜひ早めに申請をしましょう。

自立支援医療が適用されるのは、都道府県が定めた「指定医療機関」のみです。

通院している病院や薬局が「指定自立支援医療機関」に当てはまるかは、市区町村の申請窓口に問い合わせることで確認できます。

自立支援医療の申請に、通院期間の規定はありません。
通院による継続的な治療が必要であれば、申請ができます。
初診から6ヶ月以上経過している必要があるのは、障害者手帳の申請です。自立支援医療に「〇ヶ月以上通院していないと申請できない」などの決まりはないので、ぜひ早めに手続きを進めてみましょう。

「継続的な治療」に当てはまるかわからない方は、主治医や申請窓口に相談してみましょう。

自立支援医療の申請が遅くなると、それだけ医療費の自己負担がかさんでいきます。金銭的な負担を軽くすることは、精神的な不安感を軽くすることにも繋がります。

継続的に通院が必要な場合は、ぜひ申請を検討してみてください。

申請には医師の診断書が必要のため、制度のことがよくわからない場合は、「自立支援医療の申請を考えているのですが、どうすればいいですか?診断書はもらえますか?」と、まずは主治医や他のスタッフ、医療機関の窓口などに相談するのをおすすめします。

医療機関での相談がうまくいかなかった場合は、市区町村の障害福祉課などの申請窓口に相談してみましょう。

ご自身で、すべてを調べようとする必要はありません。専門家に相談をしながら、焦らずに申請を進めていきましょう。

<執筆>

くまのなな

<監修>

佐々木 規夫(「東京中央産業医事務所」産業医、精神科医)