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2020年10月17日 更新

「精神科」と「心療内科」はどう違う?病院の選び方は?受診に関するQ&A

「精神的な不調が大きい」
「ストレスで身体に影響が出た」

メンタルヘルスに関わる困りごとを解決するためには、適切な医療と繋がることも重要なポイントです。ですが、いざ受診したいと思っても、「どうやって病院やクリニックと繋がればいいかわからない」と戸惑ってしまう方も多くいらっしゃいます。

今回は、スムーズに受診の機会を得られるように、「精神科と心療内科の違い」「病院やクリニックの選び方」など、疑問の声が上がりやすい点をQ&A形式でご紹介します。

精神的な不調や、ストレスなどからくる身体の問題は、主に以下の受診をおすすめします。

・心療内科
ストレスや心理的な要因で身体にあらわれた症状を治療するところです。
「気分が落ち込む」「食欲がない」「息苦しい」「動悸がする」など、ストレスと関連している可能性のある身体症状を治療します。
・精神科
心にあらわれた症状を治療するところです。
統合失調症双極性障害などの、いわゆる"こころの病気"(精神疾患)と呼ばれる症状を治療していきます。認知症発達障害の治療も精神科に含まれます。

身体と心のどちらの不調か判断できる場合は、身体にあらわれた症状が目立つ場合は「心療内科」、心にあらわれた症状が目立つ場合は「精神科」を受診するといいでしょう。

身体と心は連動しているので、ご自身で判断できない場合も多いでしょう。

「精神科」と「心療内科」は、医師としての専門性は異なりますが、ご本人がどちらを受診するか選ぶ際は、そこまで気にしなくても問題はありません。

精神科医が心療内科の看板をかかげていることも多く、ストレスを原因とする身体の症状は、精神科医も治療経験を積んでいるからです。

どちらを受診すればいいか迷ってしまう場合は、「精神科」「心療内科」のどちらであっても、自宅や職場から通いやすいところを受診するようにしましょう。

もし不安な場合は、受診の予約の際に自分の症状を伝えて、診察の範囲内か確認してみるのもいいでしょう。

病院とクリニックの大きな違いは、「入院できるか・できないか」です。
病院には入院施設があり、クリニックにはありません。

入院の可能性を感じるなら、初めから病院を受診したほうがいいでしょう。入院の調整をしてくれるクリニックもありますが、対応ができないクリニックもあります。

また、「幻聴や幻覚がある」「妄想がとまらない」など、切迫した状況の際は、クリニックではなく病院に行くことをおすすめします。

ただ、入院の可能性があるかをご自身で判断するのは、なかなか難しいと思います。どちらに行けばいいのかわからなければ、自宅や職場からの通いやすさで選んで問題ありません。

クリニックを受診した際に、症状によっては病院の受診を勧められる可能性もあります。

治療を投げ出されたのではなく、症状を見て医師が「病院のほうが適切な治療ができる」と判断したということです。その場合は、ぜひ病院を受診するようにしましょう。

※正確には、病院は「20人以上が入院できる医療施設」、クリニックは「19人以下が入院できる医療施設、または入院施設がなくてもいい」と医療法で定められています。ですが、実態は入院できるクリニックは近年減少傾向で、入院が必要な方は病院に繋げることがほとんどです。患者さん側の視点で考えると、「病院は入院施設あり」「クリニックは入院施設なし」と認識するのがわかりやすいでしょう。

診療基準は、基本的にふたつあります。

1. 本人の苦痛が著しい
2. 社会生活や日常に支障がある

不調の症状には、個人差があります。
どの症状をつらいと思うかも、人によって大きく変わります。

ストレスや悩みの影響で体調に変化があり、自分では解決できないと思うのなら、ぜひ相談してみることをおすすめします。

医師によっては、「どうしてこんなことで来たのか」と冷たい言葉を投げるところもあるようです。その一言で、心がくじけてしまう方もいるでしょう。

ですが、寄り添ってくれる医師も必ず存在します。勇気を出して診察に行った自分を責めずに、ぜひ信頼できる医師を探してください。

治療を受けるご本人が成人している場合と、未成年の場合で、確認するポイントが異なります。心の成長過程にあるお子さまの治療は、専門性が必要だからです。

未成年の方が受診する場合は、事前に電話で「未成年ですが受診できますか?」と確認することをおすすめします。ホームページに、子どもの治療をメインに行っていると記載があるところも多いです。

成人と未成年で共通している点は、まずは自宅や職場からの通いやすさです。
治療は長期的になる可能性も高いので、通いにくいところは避けたほうがいいでしょう。

その他は、受診してみないと判断できない、というのが正直なところです。

治療を前向きに進めていくためには、医師との信頼関係がなによりも大切です。
医師を信頼できるかどうかは、人としての相性の問題もあるため、どうしても受診してみないとわからないかと思います。

事前の情報や口コミに惑わされて、名医探しをしてしまうと、なかなか受診にたどり着けない可能性もあります。通いやすいところを見つけた際は、まずは一度受診してみることをおすすめします。

※発達障害の相談をしたい場合は、複雑な心理検査が必要になる場合があります。受診したいところで診断や治療ができるかどうか、事前に電話やメールで確認することをおすすめします。

初診時にどんなところを見たほうがいいか、おすすめの点を以下に挙げます。

1. 医師が説明をしてくれるか、意見を聞いてくれるか
治療を進めていく際には、ご本人の気持ちも重要になります。

例えば医師が薬を処方しても、「どうして飲むのか」「どのような副作用があるのか」などをご本人が理解していなければ、服薬に恐怖心を抱いてしまう可能性もあります。

昔は「この薬を飲んでね」で治療が終わる医療機関も多かったですが、現在は治療を受けるご本人と一緒に意思決定をしていく考え方が重要視されています。

「治療に関する説明をしてくれるか」、「こちらの意見を聞いてくれるか」は、見ておいたほうが安心でしょう。
2. 主治医制になっているか
治療は、ひとりの患者さんに対して、決まった医師が受け持つことが望ましいです。

診察をする医師が受診のたびに代わってしまうと、治療方針が揺らいでしまったり、信頼関係の構築にも影響があります。

主治医制を取っていないところは、避けたほうがいいかと思います。
3. ひとつの治療法のみを勧めてこないか
一概には言えませんが、「これさえしていれば治る!」と高額な自費診療などをかかげているところは、避けたほうがいいかもしれません。

治療は、ご本人の症状に合わせて、適したものを医師が提案していくからです。

「この治療法さえあれば大丈夫!」と言い切れる状況には、なかなかならないのが医療の世界です。振り切ったアピールをしているところは、選択肢に入れないことをおすすめします。

日本での心の治療は、基本的には薬による治療が中心になり、必要によって心理的な治療も行っていきます。うつ病の治療で多く使われる抗うつ剤であっても、数種類の中から、ご本人に合ったものを一緒に探していく必要があります。

以下は、初診の予約時でも確認できる点です。

4. 初診を予約で取っているか
病院やクリニックの中には、飛び込みの受診を受け付けているところもあります。もちろん、緊急性が高く、その場で受け付けないといけない場合もあります。

ただ、「予約をする」ということは、「ひとりの人に対して、時間をしっかり確保する」ということです。特に初診は、少なくとも30分程度の時間を確保する必要があります。

いつでも飛び込みで受診できるところは、すべてではないですが、なにかしらの懸念材料がある可能性もあります。予約管理をしているかは、確認しておいてもいいでしょう。
5. 制度や施設の紹介をしてくれるか
必ずではないですが、自分にとって必要な制度や施設と繋げてくれる専門職がいると、気持ちの安心にも繋がります。主に、「精神保健福祉士」「ソーシャルワーカー」と呼ばれる人が担当することが多いです。

初診の予約時に、「必要な場合は、制度のことも相談できますか?」と確認してみるのもいいでしょう。

複数のポイントを挙げましたが、なにより大切なのは、「この先生なら、一緒に治療を進めてもいい」と思えるかどうかです。

信頼できる、もしくは信頼できそうだと思えるなら、ぜひ焦らずに通院を続けていきましょう。

保険診療での治療費は、一律で定められています。
つまり、同じ医療行為であれば、どこの医療機関でも同じ料金です。病院とクリニックで料金が変わることもありません。

血液検査や心電図の有無などで料金は異なりますが、目安としては以下の通りです。

・ 初診時:2,500円~5,000円
・ 再診時:1,500円~2,500円

上記の診察料のほかに、薬を処方された場合は別途薬代がかかります。
内容によっても料金は変わりますが、目安としては2週間分で平均1,000円~2,000円ほどです。

保険診療と異なり、自費診療は、医療機関が自由に料金を設定できます。
医療機関によって金額は異なるので、気になる場合は予約時や診察時に確認してみましょう。

メンタルヘルスに関する治療は、時間をかけて行うことも多いです。医療費の負担が大きい場合は、公的な制度もぜひ活用しましょう。

encourage内の、こちらの記事も参考にしてください。
医療費を軽減できる「自立支援医療(精神通院医療)」って?自己負担額や申請方法を解説!

医療機関によって多少の違いはありますが、よくある例としては以下の通りです。

1. 予約をして病院に行く

2. 受け付けをして、問診票を書く
ご自身で記入する、またはスタッフが聞き取りを行います。
ホームページで問診票をダウンロードできる医療機関もあります。

3. 医師の診察
問診票をもとに、医師が診察を行います。

4. 会計
診察後は待合室に戻り、会計を行います。
薬を処方された場合は、会計時に受け取る場合と、処方箋をもらって調剤薬局で受け取る場合があります。現在は、薬局での受け取りが多いです。

どれくらいの診療時間になるかは、医師やご本人の症状によって異なりますが、目安としては以下の通りです。

・ 初診:20分~40分
・ 再診:5分~10分

当日の状況によっては、待ち時間がある可能性もあります。
患者さんの状態に合わせて診察をしているということなので、「予約した時間にすぐに呼ばれない=この病院は信頼できない」と決めつけることはおすすめしません。

時間に余裕を持って受診するほうが、ご本人も安心かと思います。

医療機関のホームページに問診票があり、待合室だと焦りや不安でゆっくり書けない可能性があるなら、自宅で記入しておくのもおすすめです。

医師に伝えたいことがあるなら、メモに書いておくのも安心です。
診察の時間には限りがあるので、「初診は30分ほど、再診は5分ほど」とふまえて、聞きたいことをまとめるといいでしょう。

「なにが言いたいのかわからない」「だけど不調を抱えている」という方も多いです。医師に伝えたいことがわからない状態でも、そのまま診察を受けて問題ありません。

不調の原因や、困りごとを引き出すのは医師の仕事です。もしうまく話せなかった場合でも、それはご本人の責任ではありません。

もし「まったく話せなかった」と自分を責めてしまうなら、医師との相性の問題もあるかもしれません。自分に合った医師を探してみるのも、ひとつの方法です。

医療機関によって、「電話予約」「WEB予約」「メール予約」など、予約方法は異なります。「初診は電話受付のみ」というところもあります。

過去に他の医療機関で通院歴がある場合は、紹介状が必要になる場合もあります。予約時に、「紹介状はいりますか?」と確認をしたほうがいいでしょう。

紹介状が必要と言われたことで、受診を拒否されたと感じる方もいるかもしれません。ですが、今までの治療法を確認して、適した治療を提案するためにも、紹介状は必要なものです。

紹介状を求めるのは、医療機関にとっては誠実な対応と言えるでしょう。受診を断られたと思わずに、ぜひ通院していた医療機関に紹介状の作成を相談してみましょう。

主治医に対して払拭できないほどの不信感があるなら、他の医療機関を探すこともおすすめします。

その際、ぜひ「ひとりの医師と合わなかっただけ」と考えるようにしましょう。心療内科や精神科への不信感を持ってしまうと、治療を進めていくうえで大きなハードルになります。

主治医に対して不信感はないものの、なかなか聞きにくいこともあるかもしれません。その場合は、メモにまとめて、それを医師に見せるのもおすすめです。余裕がある場合は、次回に少しだけ長めに時間を取ってもらえないか、相談してみるのもいいでしょう。

医師に直接相談できない場合は、他の医療スタッフにもぜひ頼ってみてください。看護師や薬剤師、精神保健福祉士やソーシャルワーカーなど、通院している方を支える専門職は医師以外にもたくさんいます。

注意点として、他の医療スタッフからのアドバイスと、主治医のアドバイスに違いがある場合は、必ず医師に確認をするようにしましょう。特に薬に関しては、主治医に相談する前に、服薬タイミングや量を変えてしまうのは避けてください。

治療を受けるご本人に、まずは診察に同行していいか確認するようにしましょう。ご家族が同席をしていることで、気を使って言いたいことを我慢してしまう可能性もあります。

医療機関によっても、家族の付き添いを受けてくれるところと、受け付けないところがあります。初診の際は、予約時に「家族が付き添ってもいいですか?」と確認するようにしましょう。

再診で家族が付き添いたい場合は、診察時に、ご本人から「次回の診察で、家族を同席させていいですか?」と医師に確認することをおすすめします。

日時の予約をする前に確認することで、家族が同席することをふまえて診察時間を調整してくれる可能性があります。

もちろん個人差がありますが、受診に繋がりやすくするために、以下の方法を試してみるのもおすすめです。

1. 身体に関する心配を伝える
「最近眠れていないから、病院で相談してみない?」「すごく痩せてきたね。食欲についてだけでも、先生に聞いてみない?」と、身体に関する客観的な事実を伝える方法です。心のことを心配すると抵抗が強くなる方でも、身体の心配を伝えることで、受診に繋がる場合があります。
2. 自分を主語にして気持ちを伝える
「私が心配だから、病院に行ってみない?」「受診してくれると私が安心だよ」と、自分を主語にして気持ちを伝える方法です。

「あなたは病院に行ったほうがいいと思う」など、相手を主語にして伝えると、自分のことを否定されたと感じてしまう場合もあります。主語を自分にすることで、相手のテリトリーを守りつつ、自分の気持ちをやわらかく伝えやすくなります。
3. 本人が選択したと思ってもらう
「すぐに相談してみたほうがいいかもしれないけど、もう一週間様子を見て、調子が戻らないなら相談してみてもいいと思うな。どちらがいいかな?」と、二種類の選択肢から、相手に選んでもらう方法です。自分で選択することで、納得して受診してくれる可能性があります。

「どうして病院に行かないの?」「なにかおかしいよ!」と、相手を否定するような発言をすると、さらに受診から遠ざかってしまう可能性もあります。周りの方の焦る気持ちもとてもわかりますが、ご本人を責める言葉は、避けるようにしましょう。

encourage内の、こちらの記事も参考にしてください。
本人が病院に行きたがらない場合は、どうしたらいいですか?

不調を抱えているご本人をサポートしている中で、周りの方も不調を抱えてしまうことは珍しくありません。心や身体に変化を感じたのなら、ご自身の診察を検討してみるのもいいでしょう。

その場合は、同じ主治医ではなく、別の医師に相談することをおすすめします。
同じ医師にかかっていると思うと、相手に話が伝わってしまうのではないかと、片方が安心して話せなくなる可能性があるからです。

また、ご自身の息抜きのために、同じ立場の方と関わることも効果的です。近しい立場の方が集まる「家族会」で本音を吐露するのもいいでしょう。

メンタルヘルスに関する相談は、「精神保健福祉センター」という公的機関が受け付けています。病院探しのサポートも行っているので、不安を抱えている際は、ぜひ相談してみましょう。

encourage内の、こちらの記事も参考にしてください。
「精神保健福祉センター」ってなに?どんなことを相談できる?勤務経験がある元職員に聞いてきました!

全国の精神保健福祉センターの一覧はこちらです。
住所・電話番号・ホームページのリンクが掲載されています。

<監修>

大澤 亮太
精神保健指定医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医 横浜市のクリニック、精神科病院を経て、平成29年に「元住吉こころみクリニック」をクリニック代表医師として開設。

<執筆>

くまのなな

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